ワックス・ワーク・サイト vol.7を見て

090218.jpg きのう(17日)、日本橋のギャラリー砂翁でオープンした『ワックス・ワーク・サイト vol.7』を見てきた。ワックス(蝋)を素材とした3人の作家の作品展であり、それぞれ蝋という物質性が独特の肌触りを目に染み込ませるステキなものだったが、私のお目当ては、もちろん配島庸二さんである。
 本サイトでも紹介してきた「炭書」の一種の発展形が披露されている。いや、炭書の”発展”というよりは、延長、あるいは変容、変態、もしくは共進化といったほうがいいかもしれない。
 会場の画廊に入るとまず、顔料が溶け込んだ蝋の「緑」が目に静かな驚きをもたらす。そして、”生命”といった言葉が脳裏に浮かぶ。これまで基本的にモノトーンで、「生」というよりは「死」への連想を誘うことの多い炭書だったが、なにやら艶めかしいエロティックで不定形な、たとえば粘菌のような原始的生命が炭になった書物をとりまき、ともども息づきはじめたかのよう。シュルレアリスムの「象徴的機能をもったオブジェ」を思わせもする(ちょっと違うか?)。
 死と生、男と女、硬と軟、固定と流動、上と下、火と水、といった相反する二項が矛盾することなく一体となって、どこか別の次元へ向けて移動しつつあるようなリアリティーを感じさせる「緑色の体液を湛えるグーテンベルク惑星」(配島さんの展示の総タイトル)であった。
 他の2人、和田祐子「カリグラフィー・記憶の痕跡」、艾沢詳子「闇の森」も、つけたしということではなく言っておきたいが、私にとっては蝋という素材の不思議な物質性に魅惑され、思わず好きになってしまう作品たちであった。
 小さな画廊の小さな現代美術展であったが、私はなんだかとても爽やかな気分になって、ギャラリーをあとにすることができた。ワックス=ワーク(ス)、蝋化=老化という言霊とまでは言わずも、”お洒落”な気にひととき満たされて。
 本展は今月の28日(土)までです。日本橋あたりにお出かけのさいは、気軽にのぞいてみてはいかがでしょう。


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