『タロットカード殺人事件』のスクープ!?

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 ▲『タロットカード殺人事件』のプログラム

 ウディ・アレンの『タロットカード殺人事件』を観ました。場所は『長江哀歌』につづき、日比谷シネ・シャンテ(今度は4F)。このところ、この界隈には縁がつづいています。しかし今回は、この映画を見るぞと目的を決めて見に行きました(上映時間もネットで調べて)。
 だから見る前にいろいろ期待があったのだけど、『タロットカード殺人事件』というタイトルに惹かれて見に行くとハズレます。タロット(タローともいう)というカードの象徴的暗号の解読でも、アガサ・クリスティーやエラリー・クイーン風ミステリーの謎解きを中心に愉しむ映画でもないからだ。これは、あくまでウディ・アレンの新作映画として愉しむべき映画です。久方ぶりにウディ・アレン自身が出演しているし、70歳になった彼と、いま若さと成熟度の按配が危うく絶妙な、魅力はちきれんばかりのスカーレット・ヨハンソンのオトボケ・コンビぶりを味わうのが一番。


 原題はScoop(「特ダネ」のスクープ)。
 舞台はロンドン。例によってストーリーはくわしくは紹介しないが、ジャーナリト志望の学生(スカーレット・ヨハンソン)とひとりの老いた手品師(ウディ・アレン)がひょんなことである殺人事件の真相を暴露(スクープ)するチャンスに恵まれ、証拠を手に入れるために真犯人と接触する。見るほう(観客)には犯人はあらかじめ明らかになっていて(じつは,ちょっとした勘違いがあるのだが)、こういうミステリーの手法を「倒叙」というらしいのだが、その犯人を「幽霊」に教えられて追求していくというあたりがユニークといえばユニーク。その幽霊が手品とからんで出てくるのだけど、見ているほうはあまりにあっさりと「レテ、忘却の川(日本風にいえば三途の川)」から戻った幽霊が出てくるものだから、ちょっと拍子抜けしてしまうところはある。
 しかし、神秘めかした思わせぶりが嫌いらしいウディ・アレンの今回の脚本は、手品を重要な道具立てとしつつも、いつもの軽妙さに加え、この「あっさり」さ加減が堂に入った感じ。スカーレットはあっさりと恋に落ちてしまうし、幽霊はあっさりと出現しては無責任に消えてしまうし、主人公ふたりの生死もトランプのようにあっさりと裏返ってしまう(タロットカードはトランプの前身といわれている)。
 映画がひとつのマジックだとしたら、映画のなかの手品はあっさりとネタをばらしておいて、映画=手品という表層(スクリーン)のマジック(あるいは「これは映画ですよ」と、あらかじめタネを明かしたマジック)の映画「それだけ」を愉しみなさい、ということか!?
 この映画、前作『マッチポイント』とかなりテイストの違う作品になってはいるが、運・不運、ウソとマコトは表裏一体というキー「ポイント」は同型である。『タロットカード殺人事件』はタロットカード(トランプ)、『マッチポイント』はコイン。ともに、あっさりと裏返るもんです。
 それがこの映画のスクープ(特ダネ)なんだろう、といっておきましょう。
 女優を活かす(輝かす)うえでは百戦錬磨(?)の職人ウディ・アレンだけど、個人の好みとしては「やっぱり」前作『マッチポイント』のスカーレット・ヨハンソンの方に魅力を感じるな〜っ。同じ少女っぽい役だったら『ロスト・イン・トランスレーション』(ソフィア・コッポラ監督)の彼女! そして『真珠の耳飾りの少女』(ピーター・ウェーバー監督)の彼女! 2008年公開予定の『Woody Allen Spanish Project』にも出演しているらしいけど、この次回作の彼女はどんなか、スカーレット・ファンはたのしみに待ちましょう。ウディ・アレン好きはいうまでもなく!


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