一昨日のこと、同じOCHABI(御茶の水美術専門学校)の講師をしているイラストレーター伊藤彰剛さんの個展を見に、何年かぶりに荒木町へ行った。
ほんとに久しぶりだったし、おかしな言い方だけど、雨傘を杖がわりに、道に迷って狭い通りをさまよっていると、なんだか不思議なデジャ・ヴュ感覚におそわれた。
デジャ・ヴュすなわち既視感っていっても、はじめて来た町じゃないので既視なのは当たり前なわけだから、忘れていた過去が夢の記憶として意識の底深くに沈みこんでいたところに突然に光が射したみたいに、なつかしいけど、はじめてそれを「現実として」見るような気がしたのかもしれない。これまではたいてい夜に行っていたので、昼の街路がはじめて来た町のように感じられたということもあるだろう。
画廊(queue gallery)に行くときより、作品を見た帰りに強くそれを感じたのは、伊藤さんの少しダークだが、ほんのり温もりのある水彩イラスト(装画)が、それだけ親密でノスタルジックな気分を呼び起こし、「現在」を変容させうるどこか根源的で「無垢」な、一種の物語る力をもっているからかもしれない。