今福龍太の『書物変身譚 〜琥珀のアーカイヴ〜』(新潮社)は深い陰影に縁取られた詩的イメージと、鋭い直観的示唆に富む素敵な本だったが、そのなかに「パリンプセストとしての洞窟」という章があり、ウェルナー・ヘルツォークの監督したドキュメンタリー映画『世界最古の洞窟壁画—-忘れられた夢の記憶』のことが出てくる。(1990年代当時としては)世界最古の洞窟壁画が発見されたショーヴェ洞窟の全貌をはじめてとらえた映像作品である。TVでも放映されたことがあるので、知っている人もいるだろう。
今福氏はこの作品をもとに一種の霊的メディア論とでもいうべき洞窟壁画=書物論を展開するのだが、映像だけではなくさらにその音楽のことにも触れていて、私も強く興味を惹かれたていたところ、ある親しい知人がそのサウンドトラックCDを持っていることがわかり借りることができた。いま、そのCDを聴きながらこれを書いているのだが、、、それが、やはり、とてもいいのだ。
映像とナレーションのバックに、洞窟内に涌き出す地下水のように静かに流れるこの音楽を聴いたときから惹かれてはいたが、こうしてそのチェロやオルガンを主とした響きを音としてだけで聴くのもなんとも素晴らしいひとつの「洞窟体験」となりうるものだ。
CAVE OF FORGOTTEN DREAMS
A film by WERNER HERZOG
Soundtrack by ERNST REIJSEGER
オランダの歴史ある古い小さな教会でアナログ録音されたという。
写真は今福氏をまねて、彼の本とこのCDジャケットを二重露光で撮ったもの。そういえば、今福さんも同じFujifilmのカメラをつかっていると言っていた。
CAVE OF FORGOTTEN DREAMS
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