2人展
*蓜島庸二/グーテンベルク聖婚碑―海を孕む”G”
OPENING:8月30日 午後5時より
12:00〜19:30(最終日のみ17:30まで)日曜休廊
exhibit Live&Moris Gallery
東京都中央区銀座8−10−7 東成ビル地下2F
http://artlive.cool.ne.jp/
Tel: 03-5537-0023 Fax: 03-5537-0030
驚くべきことは、輝かしく美しい、パワフルでエネルギーに充ちた世界は、はっと驚くと同時に、その反対に時の流れが、公私ともどもに破壊的努力や解決不能な不協和による人間のエネルギーの浪費であるとおもうとき、悲劇の世界のカウンターポイントにいるのです。
このような緊張感が私の想像力の源となっており、そしてまた私のすべての創作にこの力を表現していきたいのです。心と精神を 満たしたり無にしたりする人間の作り出す幸福感と失策。人々が作り出す歓喜と恐怖、どのようにこれらを調和させることができるのであろうか。
私の望みは人々に今、どうであるか、将来どういう風になれるかの価値を示すことである。と同時に私は暗闇や障害などこの世界では解決不可能なことにエキサイトしてしまう。これらの出来事はコントロール不可能で、危機は我々のキャパシティーを超えたものである。逆説的にいえば我々の失敗と弱さも究極的には美なのである。
我々は我々の一番の弱点が自分のどこにあるかをはっきり示すことができる。ヒーロ二ムス ボーシュのイメージが、破壊されたグロズニーから、デトロイトのスラムまで強烈に燃えている。被害を受けたすべての地区は、希望と願いを持って良くなるように祈る人たちであふれている。
ポジティブとネガティブな力。私の願いは、私の歓喜と悲しみを見る人の創造の中にコミュニケートさせるために刻み込むことです。
私が制作上努力している到達点は、嵐の中の灯台の光のように我々の船をも破壊できるほどの岩を照らし、港まで安全に我々を導く救援ボートのような作品を制作することにあります。
我々が生きるためには避けられないパラドックスは、醜さと偉大さ、合理的、非合理的歓喜と悲しみ、過去の方法で提示された現在、こういったすべての矛盾が、我々を詩的世界に誘い込んでいくのです。(パリ在住)
―海を孕む”G”
素材/炭に焼いた本、蜜蝋、麻縄、塩、海水、試験管、段ボール他 なお、本を炭に焼くにあたっては、青森県深浦の炭工房・勘の協力を得た。
・15世紀の大発明である活版印刷術、それの生み出す膨大な本というメディアは、人間が言葉をあみだし、文字/本というものを創りだして以来の様々な過剰を、一気に、集約的に拡大して、今見るような巨大な文明を・・・。
・そして生み出された、抑圧と強度な管理社会は、本という強靱な壁に張り巡らされた、まさにDystopia!
・いっぽうで、その強靱な、本の壁を突き崩す本、もまた多数印刷されて、そのボルテージが頂点に達した広場では、つねに文明のヒステリーが発する焚書の炎が燃えさかる。
・それも今、さらなる抑圧を発達させる ITメディアに、その主役の座を譲り渡そうとしている”本”―いわばグーテンベルク文明の終末。
・本というメディアを「炭」に焼く。情報のメディアとしての本に、炭が持つ環境の浄化力という”もう一つの情報”へと転生させることで、本が築き上げて来た過剰な環境の、ささやかな浄化を果たすものとして再生させる。
・同時に、情報という概念そのものを、単なる言語情報から、宇宙的巨大情報へと解放する、やはり、ありふれた、しかしIT時代の新たな”焚書”。
・『(その成果を)父型と母型の驚くべき結合』によるもの、と、かつてグーテンベルクが自分の印刷したカトリコンという本の、その序文に記したという、金属活字の鋳造法。そこに含喩された錬金術的聖婚譚。
・子どもを宿した女性のお腹には海がある、と・・・生物の始原/海への憧れ。
・新たに増幅されつつあるIT時代のディストピアへ向けて、新たな文明浄化への願いをこめて、グーテンベルク聖婚の碑『海を孕む”G”』を、打ち建てる。(千葉県在住)