“クローンド・ヴィーナス”によって破壊されてきた”余白”の”再生”へ向けて
a)私がまず取りかかったのは、”クローンド・ヴィーナス”の中で常に破壊されてきた”余白”の”再生”ということです。
これはかなり以前から私の中に一つの蟠りとなってきたことですが、いちど描いた作品を切り刻んで、ある別の脈絡を持った固まりを切り出そうとするものですから、どうしてもその絵の持っていた”余白”を切り捨ててしまうということになります。つまり余白の破壊です。
しかし切り刻むといってもそれはただ徒に切り刻んでいくわけではなくて、一応完成をみた画面には自ずからドローイングの脈絡のようなものが具わっていて、その脈絡に沿ってナイフを入れて、幾つもの断片を生み出していくわけです。その一片から描き継いでまたもう一つの絵画をうみだしていく。そしてそれをまたさらに新たな脈絡に沿って・・・というように、切って貼っての作業を無限(と思えるほどに)に繰り返していくことで新たな作品を生みだしてゆくのです。ですからいくら繰り返しても余白を生み得ない、余白を持ち得ない絵画、それが”クローンド・ヴィーナス”だったのです。
そこで今回はその、破壊された”余白”を”再生”させることで作品化してみよう、というわけです。自分のアトリエから運んできた大きな段ボール箱2杯の切れ端の中から、そうした”余白”を探し出しながら貼り合わせていって、そのことで出来る宇宙的な極大への脈絡を、また切り刻んでいって、そうして出来た余白の集成は限りなく宇宙的極大方向へ拡張して行きます。そのようにして今回の作品『余白の再生=右/左』は、一応の完成を見、子供たちの作品と呼応するように壁面に並べました。
そして一方で、切り刻まれて断片化した余白は更に切り刻まれて、余白はどんどん小さな断片と化し、その途上で、或るものは別の作品に分化しようとするのですが、その過程でも刻まれてやがて極微の宇宙へと吸い込まれてゆきます。この極微方向に向かう断片は『余白の再生=右/左』の壁際近くに床にばらまいて、そして極微極大を一体化したのです。
そうして出来た作品が今回出品した『余白の再生=右/左』ともう一点。これは会期半ばで制作された『余白の再生=フリー・ラジカル』ですが、前述のように、そのとき既に壁に展示されている、小学3年生38名へのワークショップ『悟空よ!』で出来た作品群とコラボレーションする気持ちで制作したものです。
b)アトリエから持ち越した制作途上の作品『受胎告知』の一群を引き続き描き継いでいくことでした。これは大小混ぜて32点ありますが、これらを描き次いで、小学6年生60人へのワークショップ『悟空よ!』(詳細は後述)で作られる段ボール箱の作品と組み合わされて展示されるものです。
以上が従来型の平面作品ですが、その他に今回のAIRへの参加によって生まれた作品として、
c)パフォーマンス『庸二の楊枝』12,000年のプロジェクト
d)茶会のためのテーブル、『破壊された「継ぎ手・仕口」の再生』
e)『環境活性化ー炭書』グーテンベルグ期の終末へ」
などがあります。
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